第三回「不快感の解消」

「さわやかお産~楽なお産を目指して」三回目

4.不快感の解消。

痛くない動き・動きやすい動き・スムースな動きをすると、体の痛みやだるさがなくなって楽になる。
妊娠体の痛みをとるのには、体に安全なSEMの動き方が適しています(一回目・注4参照)。

月~水曜日のさわやかお産にくる人たちの肩こり腰痛、むくみなどの解消はすべてこの動き方によるものです。
妊娠体の腰痛にはてごわいものもあるが、それぞれの症状に適した動きをすることで軽減し解消します。

◆SEMの動きで、妊娠体は楽になる。

★体を楽にする(1)

はじめにするのは、エネルギー(気)の補給法を覚えることです。
図1は補給のポーズで、この体型(動き方または体の構え方)を「足・掌1」といい、妊婦にとって基本中の基本といえるものです。
妊婦に基本といえばそれは女性向きでもあるということです。

これでエネルルギーが補給されて、静かにしていると微調整される。 敏感な人は腕や脚に流れるエネルギーがわかります。ためしてみましょう。

●実技

〔足・掌1〕

  1. ゆっくりと息を吐きながら、足と掌をそらせて腕を立てて、4呼吸する。 写真1
  2. 2.静息・3回目の呼気で動きを止めて、4呼吸のあいだ休む。この動き方を2~3回、行う。

足と掌をそらせて、両腕が120~140度くらいになるように肘を開く。そのまま4呼吸するだけでOKです。
このポーズが心地よいと感じたときは、そのまま30~40秒くらい続けてもいいです。 呼吸を意識的にするとエネルギーはさらに高まります。

仰向けになるとお腹の重さがゼロになるので、急に眠くなってくる。
ですから、このポーズをするときは眠くなるのに備えて、薄い掛けものを用意しておくようにします。 膝を折り曲げた仰向けでぐっすり寝てください。

◆足・掌1でエネルギー補給して、ぐっすり寝る。

足・掌1で補給されたエネルギーは、心身のアンバランスの調整に回されるため、痛みの解消には効かないです。
足・掌1により補給されたエネルギーは、生活行動と頭を使うことでエネルギーは消費された分の調整に費やされる性質のものです。

足・掌1による例です。
腰痛がそこそこによくなった後に、午前と午後、このポーズを熱心に行っていた人がいます。 ポーズ後の眠りが心地よかったので、この方法で寝ることが楽しみになったのです。 10~20分の静かな眠りがその人には合っていたのでしょう。

おおよそ3ヶ月すぎたころ、3時間の苦痛の少ない状態で2人目が生まれたそうです。大いに喜ばれました。

◆心がけていると、効果が表れる。

★不快を解消する。

痛い・苦しい・だるい・重苦しい、動きがスムースでない・動きにくいといったように、体の不調を表わす言葉はたくさんあります。
体調を正確に言い表していますが、ここでの説明にそのまま使っていたのでは、バラバラでまとまりがなく統一性に欠けています。

解説には一つの言葉で表わすとわかりやすいので、バラバラなものをまとめて「不快」で表現しています。
説明文の不快とは、そういう意味になります。

◆不快で統一して表現。

さわやかお産にくる人たち向けの資料があるので、そっくり載せておきます(実技の詳細は後記)。
説明の通りに体を動かすと瞬間的に痛みがなくなる。あまりにも簡単に痛みが消えるので、ビックリする人が多いです。 そのおかげで動かし方はすぐに覚えるようです。

※膝倒し2・膝2

さわやかお産(永福町)にきた人に最初に覚えてもらうのは、表1の内訳です(一回目参照)。
その説明からここまでかかる時間は約40分。少し痛みの強い人で約1時間くらいです。

ようやく歩けるくらい痛い人や、後記の朝起きるのに7~10分かかる人には、 20分くらいの休みをとって、2回にわたって動きをして、できだけ楽になるようにしています。
その場合は1時間40分くらいかかる。妊娠体の痛みはほとんどが腰周辺部で、楽になるのには「自分で楽な動きをする」だけでいいのです。

◆楽な動きをすると、痛みがとれて楽になる。

★動き方について。

先に載せた実技、〔膝倒し2・膝2〕の動かし方を詳細にします。
この場合は6ヶ月目以上向けなので、まくらを使うことが前提になります。

〔膝倒し2〕

    テスト

  1. 立てた膝を左右へ倒してまくらに押しつけるようにすると、倒しやすい方と、倒しにくい方のあることがわかる。
    それがわかったら、倒しやすい動き方を、次のようにする。
  2. 膝倒し

  3. 膝を倒しやすい方のまくらに押しつけるようにして、4呼吸する(線図1)。
  4. 腕上げ

  5. 次に、倒した側の腕を頭の方に伸ばして、4呼吸する(線図2)。
  6. その後に、静息・3回目の呼気で動きを止める。
    4呼吸以上、休む。
    この動き方を、2回行う。

立てた膝を左右に倒して、動かしやすい方がわかったら、その動きを最少筋力で、ゆっくりと行う。

運動範囲ギリギリまで動かないで、その一歩手前のところで動き続けるようにする(図2)。
この場合はまくらに膝を押しつけると動きがとまるが、動きはとまってもそのまま動き続ける(まくらに膝を押しつける)のを、4呼吸のあいだする。

膝倒しを4呼吸続けたら、次に、膝を倒している側の腕を頭の方に伸ばして、4呼吸する。
腕を上げると膝倒しが促進されるため効果がある。

腕上げを4呼吸続けたら、細めたくちびるから笛を吹く要領で息を吐く。
これを静息(せいそく)というが、3回目の吐く息に合わせて、動きを止めるようにする。

◆効果。
腰周辺部の痛み、だるさによく効く。
腰の痛みに対しては定番の動きです。

〔膝2〕

    テスト
  1. 立てた膝を左右交互に押し出してみると、押し出しやすい方と、押し出しにくい方のあることがわかる(線図1)。
    それがわかったら、押し出す動きを次のようにする。
  2. 膝押し出し

  3. 押し出しやすい方の膝を、ゆっくりと押し出して、4呼吸する(線図2)。
  4. 次に、膝を押し出した方の腕を頭側に伸ばして、4呼吸する(線図3)。
  5. その後に、静息・3回目の呼気で動きを止める。
    4呼吸以上、休む。
    この動き方を、2回行う。

足の位置はそのままにして、立てた膝を左右交互に足元のほうに押し出してみる。
押し出しやすいほうがわかったら、その膝をゆっくりと押し出すように動かして、4呼吸する。

運動範囲ギリギリまで押し出さないで、その一歩手前のところで押し出し続ける。
その動きを4呼吸続けたら、次に、膝を押し出している側の腕を頭の方に伸ばして、4呼吸する。

腕を上げると、膝の押し出しが促進されるため効果がある。

腕上げを4呼吸続けたら、細めたくちびるから笛を吹く要領で息を吐き、3回目の呼気(息を吐く)で動きを止めるようにする。

◆効果。
腰周辺部痛みや、だるさ、生理痛や生理不順によく効く動きです。
したがって女性には定番で、必ず行うようにします。

★朝起きるのに7~10分。

動くと腰に痛みがでるので、朝起きるのに7~10分かかる人たちがいる。痛みを我慢しながら起き上がるという。
起き上がった後はそろそろと動くので何とかなるが、起きるのが大変だといいます。 朝の起き上がり7~10分型は、1/30人はいるようです。

あまりにも痛くて歩けないことがある。
それでも子供のことを第一に、腰の痛みに耐えながらピサの斜塔のように傾いて検診を受けにくる。 本当に頭が下がる想いです。

苦労している妊婦に対して、検診側はどうかというと、第一にそこは検診するところであること、第二に不快の解消法をもっていない。 第三に検診するの忙しく、他のことをする余裕がない。
ということで不快の解消に取り組むことなど不可能な状況です。妊婦に対する社会環境はきびしい状況にある。

◆妊婦の痛み、世間の環境はきびしい。

日本人でアメリカの外科で准看をしている人です。
その外科には産院も併設されているという。アメリカにおける妊婦の腰痛はどうかと聞くと、妊婦の宿命論でガンバレの一言だという。

その説明のしかたは日本よりもはっきりしているようです。
その人はヨーロッパにもよく行くそうで、それによると、妊婦の腰痛宿命論はドイツ、フランス、イスラエルなどにおいても同じという。 それは世界的傾向のようです。
要するに妊婦の痛みに対しては、どこもここも昔のままだということです。

妊娠体とは一人の二人体のことをいい、それは分娩に備えてあらゆる機能を総動員している体のことでもあるのです。
妊娠体は日々変化する。
その変化に体が適応していると快適であり、そうでないと不快になる。

妊娠体の腰周辺部の痛みは腰椎・恥骨・尾骨・仙骨・腸骨・股関節・ソケイ部に発生する(図3)。

その全部が分娩に適応していないというのはちょっと考えにくいですが、連動性によって2~3ヶ所の不適応は考えられる。 それらが原因で不快になるのです。

妊娠体を不快から助けるのには、不適応部分を適応できるようにすることです。

痛みの大半は運動系の歪みが原因です。
運動系の歪み(注8)を薬で戻すことは不可能だ。
楽にするのには歪みを解消して、体の治癒力を発揮できるようにすることです。

◆運動系の歪みを正すと、不快は消える。

★心身が柔らかいとお産は楽。

助産関係者は体が硬いと苦しいお産になることを知っている。 体を柔軟にして痛みをなくすと、分娩が楽だということを経験しているためです。
そこで体を柔らかくすることを勧めている。 一般的にマタニティヨガを進めるが、1日に歩く歩数を指定する助産師もいる。

医院・助産院で腰痛教室を開いているところもある。
それは分娩に時間がかかり、その原因が体の硬さであることを知ってるからです。 言い換えてみると体の硬い人が多いということです。
同時に苦痛な分娩が多いという裏返しでもあり、痛みをなくす方法を持っていないということでもある。

分娩は骨盤(腸骨)と子宮が開くことで始まる。
それにはまず仙骨が剥離して、それから腸骨が開く。
腸骨の開きが十分でないと陣痛が強く分娩もスムースにいかない。
したがって妊婦の腰痛は「分娩が長くなる」という知らせでもあるのです。

大腿部を内側に引き寄せたり、下腿を外側へまわすのに働く内転筋は、妊婦の場合はその他として出産に関係した筋肉になる。 助産師の中には内転筋を柔らかくするのに、妊婦を横寝にさせて大腿部内側を足で踏みつける人がいる。
妊婦は痛みに耐えて顔をしかめることになるが、助産師は目的を達成するために遠慮なくやる。
妊婦は大変だ!

◆柔軟体のお産は楽だ。

★産後の腰痛後遺症。

陣痛から分娩まで10時間というのが妊婦のあいだでは通説になっている。 ところが現実には15時間、24時間、中には36時間という人もいる。
その人たちに聞いたところ妊娠前に全員が腰痛、約80%が生理痛を、妊娠後は全員がつわり、背部痛、腰痛を経験している。 そして20時間以上の人は産後に腰痛の後遺症になる傾向にあようだ(表4)。

経産婦の腰痛を調べてみると、お産の後遺症と考えられるケースが多い。
後遺症の人たちは分娩時間が長い。
ことのはじまりからたどってみると、妊娠前の生理痛と腰痛がつわりに、つわりが背部痛と腰痛に、背部痛は陣痛を強め腰痛は分娩を長引かせて、 産後に腰痛の後遺症になるという流れになっている(表5)。

助産にかかわるベテランの人たちは、独身のときの生理痛が妊娠してそれぞれの症状になり、陣痛と分娩に影響するとことを知っている。
しかし世間の女性たちはそれらのことを少しも知らない。
そこで妊娠前の腰痛と生理痛が、妊娠後と分娩に影響することなどの周知が必要です。 知れ渡るとお産の楽につながる可能性がある。

◆分娩のときの腰痛は、後遺症になりやすい。

妊娠前の腰痛については次のようなこともあるので、気をつけるようにしましょう。
妊娠前の腰痛を解消するのに整体の骨ポキにいった。
妊娠して腰痛になり、分娩後に腰痛の後遺症になった人たちがいた。
その一連の内容を知って驚いた。
そんなことが起きるなんて考えられない。それは次のようなことでした。

独身のとき腰が痛くなって整体の骨ポキで楽になった。
本人がいうのには、体を横にして腰の後ろの骨(仙腸関節。図3参照)をポキッとされたという。 妊娠するとつわりになり、ほどなく腰痛になった。
ふたたび整体にいったが、妊婦なので何もしてくれない。 そのまま腰痛を我慢して陣痛から分娩まで24時間におよんだ。 その影響で産後2年たっても腰痛で苦しんでいる。
あきらかな後遺症だ。
妊娠中の腰痛から産後の後遺症につながっている例は多いのです。

骨ポキの一件は、次のことがきっかけであきらかになったのです。
さる治療院で助産師による妊婦向けの勉強会があった。 それは妊婦の肩こり腰痛やピサの斜塔型をなんとかしたいということで始まった集まりです。

そこに通院している腰痛の経産婦を数人みることになった。
産後1~2年の若いお母さんたちが中心で、しかも全員が妊娠前に整体にかよっていて、 その中に骨ポキを体験した人たちがいたのです。
しかもお母さんたちは20~30時間というきつい分娩を経験していた。

産後1~2年の若いお母さんたちは数人なのに、全員が整体にかよってそうなったというのだから、世間では大変なことが進行中ではないかと感じた。
整体については注9としておきましたが、他力的に骨を動かすというのは、あきらかに体を物扱いしている(注9)。

知り合いに妊婦と経産婦にヨガやバランスボール、操体を教えている女性がいる。
世間で進行中のことをたしかめるために、参加者の聞き取り調査をお願いして、筆者も調べてみた。その結果ゾ~ロゾロ出てきましたよ。
皆さんの話しには独身から産後にいたるまでの、あらゆることがそろっていましたね。

もちろん整体骨ポキや治療院のこともあった。
それよりもこんなことが起きていたのかと、内容を知って驚いたと同時に怒りがわいてきたものがあった。 やってはいけないことを、やっていたからです。

一つ目は骨ポキ整体にかよった人たちに、妊娠すると腰痛になるケースが多いことです。 そんはバカなことがあってはならないのに、実際にあるのだからとんでもことです。

◆整体骨ポキ、気をつけよう。

すでも述べように、妊娠前の腰痛と生理痛は妊娠後の腰痛の原因になっているので、このケースもそれに当てはまるのかもしれない。
したがって妊娠前に整体へ行くことを、妊娠後の腰痛に結びつけるのは短絡的すぎるが、そうではないという証拠もないので、この場合は疑ったほうが今後のためになる。

二つ目は整体に助産師が経営しているところがあったことだ。
腰痛の後遺症を作るなんて、とんでもないことをしている。
後遺症にするために行ったのではないにしろ、結果的にそうなったのだから、とんでもない助産師だといわれても致しかたがない。 しかもその数たるや相当なもので、もっと詳しく調べたら、それだけではすまないかもしれない。

◆腰痛の後遺症を作る助産師もいる。


◆注9 運動系の歪み。

歪み。 歪み(ヒズミ・ユガミ)の呼び方がある。
構造上において、基本的なかたちがくずれないでアンバランスになったときをヒズミ、基本的なかたちがくずれたときをユガミという。
ヒズミとユガミは故橋本敬三医師によるもので、昭和初期に操体法の原理を提唱したときに始まる。
世間が「体の歪み(ユガミ)」と表現したのはここ15年くらいのことで、まだヒズミの原理を知らないようだ。

◆注10 骨ポキの一件。

治療や健康法を指導している99%の人たちは、体型や骨格をそろえると良くなると思い込んでいるようだ。 かたちを直すという考え方、たとえば曲がった腰を伸す・体の傾きを直すというのは下の下で、感覚の正常化をはかるのが上級。 感覚を正常化すると機能と体型もそれに適合したものになってくる。 したがって腰の曲がりや傾きも、感覚にそって戻るようになる。

骨ポキの一件には、二つの側面がある。

  1. 骨盤の歪みをわずかに残すと、妊娠による痛みは少なかったケースである。 歪み・ズレなどの長期化は、それに適応した体にするため、歪みを完全に戻すとそれが原因で不快になることがある。
  2. 歪んだ体(歪体)にとって、歪みを戻するとそれが「歪み」になるため、新たな痛みになることがある。

骨ポキの一件は、妊娠体の痛みを解消すればいいことで、しなかったために面倒を引き起こしたもの。 妊娠中に解消しておけば産後の後遺症まで苦しまなかった一件でもある。

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