第四回「陣痛に備えて」

「さわやかお産~楽なお産を目指して」四回目

5.陣痛にそなえて。

A.陣痛にそなえて。

体を楽にする動きは、「静息・3回目の呼気で、動きを止める(トメル・ヤメル)」ことになっている。その静息が陣痛を和らげる呼吸法です(注11)。
静息をしたことで陣痛感のきつさが「それ以上」にならなかった人たちがいます。 静息をしなければ、そうはなりません。

◆静息で陣痛感がやわらいだ。

静息のことを耳にすると、ほとんどの人たちが、呼吸法は簡単だからいつでもできる、と受けとめるようです。いつでもできるから、静息の練習をしない。 練習をしないから呼吸法が身につかない。身につかないから、必要なときにできない。
これがほとんどの人たちがたどるコースです。

もう一つは、陣痛のあの嫌悪感のために、呼吸どころではなくなるためです。 しっかり練習して陣痛に備えなければ、楽なお産は望めません。

◆静息を練習する。

静息は次のようにします。

★陣痛をやわらげる・軽くする(静息図)。

陣痛がはじまる少し前に、あるいは陣痛がはじまったら、眼を閉じて細めたくちびるから、笛を吹く要領で、息をゆっくりと吐く。 陣痛が続くかぎり、静息を続ける。

吸うのは2~3秒。吐くのは6~10秒。やや大きめに吸って、ゆっくりと吐く。

陣痛感覚のほうが強く、押し返されるかもしれないが、それでも静息を続ける。 静息を続けることができれば、もう少しの辛抱。

陣痛感覚に負けそうになったときは、陣痛感覚に息を吹き込むようにイメージする。 陣痛感覚がチリヂリになるように息を吹き込む。

陣痛感覚に負けそうになったときは、呼吸を意識する。 呼吸を意識することができれば、陣痛は楽になる。

不快を解消して体を楽にするSEMの動きは、静息で止めることになっているので、動きをすることで自然に静息を覚えるようになっているのです。
細めたくちびるから笛を吹く要領で、息をゆっくりと吐くことを10~15回続けます。 これを毎日2~3回する。それを2週間くらい続けていると、静息が身についてきます。

B.分娩にそなえて。

子宮に関連した筋肉と大腿部内側の筋肉、そして腰周辺部の筋肉などをゆるめると、お産は楽になることが経験的に知られている。
それにはゆるめるための動きやポーズをするのが一番です。 マタニティヨガ、水泳、歩くTBなどを積極的にすることです。妊婦向けの柔軟体操もやればそれなりの効果があるので、心がけることです。

頭と体が柔らかい人はお産が楽です。
心と身の軟らかさと楽なお産の関係では、前者のほうの影響が大きいです。 とにかく体から不快を解消して、柔らかくすることですよ。少しでも楽なお産を望むのであれば、そうすることです。

お産を楽にするための動き方は、36週目あたりからします。
主に腰周辺部と内転筋をゆるめるためのものです。いつも使っている資料を載せておきます。

●実技

〔膝・股2〕

  1. 呼気で、膝を左右交互に屈伸して、線図1~3のようにする。
  2. ゆっくりとした呼気で、片膝を折り曲げて、4呼吸する(線図1)。
  3. 次に、他方の膝を、2と同じ方法で折り曲げて、4呼吸する(線図2)。
  4. 続いて、先に折り曲げた膝を、ゆっくりとした呼気で伸ばして、4呼吸する(線図3)。
  5. さらに反対側の膝を、4と同じ方法で伸ばして、4呼吸する。

この動きを、一度に7回以上行う。
毎日2~3回する。

左右脚ごとでも、両脚を同時に行ってもいいです。
両脚を曲げて伸す動きで1セットです。
これを一度に7セット以上行い、1日に2~3回繰り返します。
ゆっくりとした呼気で屈伸すると、大腿部の内側と外側をゆるまるので、楽なお産に役立ちます。

★脚を伸して仰向けに寝れる人はお産が楽。

お腹が大きくなってくると、脚を伸して仰向けに寝るのが難しくなる。 では、お腹が大きくなると誰でもそうなるのかというと、9ヶ月目でも脚を伸して寝れますよという人もいる。

一般的に、脚を伸して寝れるのはせいぜい20~30分といったところですが、長時間、寝ることができる人もいる。
6ヶ月目でもこうしていましたよと、9ヶ月目の人の仰向け寝を見せてもらいました。
どこにも窮屈感と突っ張り感のない、あっさりと脚を伸した仰向け寝です(写真8)。

8~9ヶ月目に脚を伸した仰向け寝ができる。
実は、これがお産は楽かどうかをおおまかに見分ける材料の一つになるのです。 「おおまかに」ですよ。絶対ではないので間違わないでください。
たとえば、先の脚を伸した仰向け寝を20~30分できる人は、 比較的らくなほうで、それ以上寝れる人はもっと楽です。

脚を伸して仰向けに寝ることができる人は、お産が楽というのは経験的に知られています。
脚を伸して仰向けに寝れるというのは、体が柔らかいということです。

その柔らかさとは脊柱起立筋・ソケイ靱帯・大腿四頭筋・縫工筋・内転筋などが柔軟であって、異常緊張感が少ないことを表しています。
それらはいずれも骨盤の開きと直接的に、間接的に関連している筋です(図2.3参照)。

またそれらの筋肉が柔らかいと脚を伸した仰向け寝ができます。

ですから、脚を伸したまま仰向けに寝ることができるというのは、お産が楽かどうかをおおまかに判断する材料、つまり一つの目安になるということです。
体が柔らかいのは妊娠体にとって望ましいことです。

◆脚を伸した仰向け寝ができる人はお産が楽。

★楽に仰向けに寝るのには。

6ヶ月目になるとお腹の内圧が高くなって腹部が張るため、腹直筋と外腹斜筋が引っ張られる。 その引っ張りに連動してソケイ部と大腿四頭筋なども引っ張られて緊張する。

  1. お腹の膨らみが、張りと腹圧をつくる。
  2. 張りと腹圧が腹直筋・内外腹斜筋・ソケイ靱帯を緊張させて、引っ張りをつくる。
  3. それが恥骨筋・腸腰筋・縫工筋・大腿直筋・内転筋を引っ張るようになる。
  4. 腸骨筋・恥骨筋・縫工筋の緊張(引っ張り)が股関節を折り曲げて、大腿四頭筋・縫工筋・薄筋の緊張(引っ張り)が膝関節を伸しにくくするため、 股と膝関節を伸した仰向け寝を難しくする。

膝を立てて腹部をゆるめたものと、脚を伸ばして緊張しているものを同時に表わしたのが図4です。
左脚は股と膝が伸びているため腹直筋、腸腰筋、縫工筋、大腿直筋などが引っ張られ、右脚は股と膝が折れ曲がっている分それらの筋がゆるむのです。

一つの筋が引っ張られると、関連する筋に突っ張り感をつくる。
この場合、お腹の張りによる腹直筋と内外腹斜筋の引っ張りが、股関節を折り曲げるようにする。 股が折れ曲がると膝も折れ曲がるため、膝を伸した仰向け寝を難しくするのです。

◆腹圧が強まる⇒筋を引っ張る⇒股・膝関節を曲げて伸しにくくする。

恥骨や尾骨が痛むのは、筋緊張(引っ張り)で恥骨や尾骨が引っ張られて歪むためだ。 緊張をゆるめると引っ張りがなくなるので、痛みも消えて楽になる。

◆筋緊張をゆるめると、恥骨や尾骨の痛みは消える。

写真1(一回目参照)のようにすると、楽に仰向けに寝ることができます。
膝まくらを使うと股と膝が折れ曲がるので、下腿筋と腹部筋の引っ張りが少なくなる。 それがお腹の内圧を低下させて、楽に仰向けに寝ることができるようになるのです。

◆股と膝を曲げる⇒引っ張りがなくなる⇒腹圧が低下⇒楽に仰向け寝ができる。

★さらに楽に仰向けに寝ると、分娩も楽。

写真9のように、8ヶ月目あたりからピローを使って頭と背中、下腿を支えて「両膝を拡げて寝る」ようにすると、さらに体は楽に感じますが、 この体型が陣痛と分娩を楽にするのに役立つのです。
仰向けで両膝を開くと楽に感じるのは、大腿部の各内転筋、恥骨筋、薄筋、縫工筋、臀部に関係した各殿筋、梨状筋などがゆるむためです。

◆頭と背中を高めにして、両膝を開いて楽と感じる体型は、分娩を助ける。


◆注11

静息=細めたくちびるから笛を吹く要領で息を吐く呼吸のことをいう。
呼気=息を吸うことをいう。
吸気=息を吐くことをいう。

呼吸とは、「呼」が先になり「吸」が後になっているが、 それは、呼吸は息を吸うことよりも、吐くことのほうが重要であることを示したもの。

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