モアレ講座2「モアレの原理と観察」

解説:茂貫雅嵩

A.モアレ・トポグラフィー(moire topography)

モアレとはフランス語で、木目や波状模様になるように織られた布地のことをいいます。 それが転じて、規則正しく配列された点や列、線などを重ねたとき、それらのわずかなズレによって生じる斑紋のことをいい表すようになった。
モアレといえば一般的にはモアレ写真のことをいうが、その他に等高線模様・等高線画像、干渉模様・干渉波形のこともモアレといいます。

意味
一般 医学
moire 等高線・干渉縞 局所、局所解剖学
topography 地勢,地形学 体表面の形
graph 図表、図示 局所、場所
graphy 記録 記述、描写の接尾語

光で干渉模様が発生する原理は、次のようになる。

光は細いスリットを通すと互いに干渉しあい、光の集束(光が重なって明るい領域)と、光の不足した領域を作る。 光の不足した領域は、スリットからのある距離で最大となるため、一定した細めの黒い線になる。

よって、そのある距離に物体があると、物体上に黒い線を描くことになるので、物体表面上に凹凸があると、等しい高さの凹凸にそって黒い幅が描かれることになる。 それが、等高線である。

地図の等高線が、等しい高さのところを線で結んでできているのと同じで、モアレは物体表面の同じ高さの部分を線で結ぶ。

したがってモアレ画像を観察すると、物体表面の凹凸を読み取ることができることになり、その物体が体の場合、体表上の凹凸にそって黒い線、つまり等高線が発生するため、体型の観察が容易になるのです。

これから掲載するモアレ写真は、体の表面の凹凸(前後差)5,5mmで等高線一本が発生する装置によるものです(値が変化した写真を使う場合は、○mm差と表示)。

アモレ模様に子供たちは珍しがり大喜びです。

リングは等高(隆起)差によって発生することから等高線と呼ぶが、通常リングまたは線ともいいます。

等高線の数を表すときは、線数、本数、リング数、○線目といいますが、幼児、小学生、一般には本数がわかりやすく、なじみやすい。 そこで一般には本数、それ以外では線数と表現しています。

ここでは観察眼を養う・形態観察に精通するなど、体の観察のプロを目指すことを含めて、解説の目的に応じてリング数、本数、線数を用いるようにします。

モアレから疾患や症状を診断するというのは、なかなか難しく、ほぼ不可能といった方が正解かもしれません。

モアレでわかるのは側わん症、背筋の隆起と左右差、姿勢(円背、平背など)、脊柱の形状、体型の左右差、大き目の部分的な硬結、体型の捻じれと歪み(ユガミ)、傾きなどです。

観察眼ができてくると、体型から推察される消化器、循環器、呼吸器などの疾患の兆候、肩こり腰痛といったところです。

それでも形態観察の基本を理解し、読み取り方に精通して観察眼ができてくると、さらにそれなりの内容がわかってくる、ということもたしかです。観察をするならば、はやく観察眼ができるか、いかに見慣れるか、ですね。

そういうわけですから、これからモアレ写真・体型・姿勢を教材にして、形態観察の基本と、読み取りに精通する『眼を作る』ための見慣れ方を進めていきます。

●モアレ観察。

姿勢的に問題ありの子供たちを心配して、先生方がモアレ撮影を望んでいました。 そこでモアレ写真を撮りまくって「これこれ」と説明していたときがありました。

ところが、意外なことがわかった。

たしかに、モアレは体型の善し悪しの診断に大いに役立ちますが、では、体型を直すのにどうするのかという方法を、先生方は知らなかったのです。 おそらく、今も同じでしょう。

子供たちのモアレ写真を元に、体型と姿勢観察・姿勢作り・体型の改善・不快感の解消法などを解説をしていきます。

子供もたちは体の揺れが大きいので、撮影時に体の安定を保つ目的で、頭部を固定させた姿勢になっているものがあります。 当然、円背(猫背)の姿勢が写っているわけで、それは判断しないでください。

No1

No1

A.

リングの発生は、右肩甲骨中央部と臀部である。
左右リングで一致するのは、肩甲骨部に発生している左4線目と右7線目であるから、7-4=右が3線多い。 よって右は左に対して5,5mm×3=16,5mm隆起(手前側へ突出)していることになる。

B.

右肩甲骨内側下角は、わずかな範囲に3線発生している。
これは、同下角が手前側へ極端に突出している、つまり、手前側へめくれた形状になっていることを表している。

C.

左背部の肩甲骨中央から腰部まで発生しているリングは9線、同右は12線である。 左リングはゆるやかに発生し、なだらかな背筋による背部形状を保っていることがわかる。
対して右は短い距離に密集発生であるから、腰部から右肩甲骨部にかけて盛り上がった形状をしている。 これは、右側は腰部から肩甲骨内側下角への筋肉の質と形状が、体にへばりつくようにして硬くなっていることを表している。

D.

脊柱3~9番目あたりに、わん曲を観察することができる。
特に5,6番目あたりは、脊柱わん曲の傾向を示している。
すなわち、脊柱3~9番目による5,6番目のわん曲が、肋骨を右側へ押し出す働きをして、右肩甲骨下部に潜り込み現象を起こし、ために右肩甲骨下角を手前側へめくれさせたのである。

E.

左右体側を比較すると右は肘との間隔があり左は狭い。
側わん症の場合、右が広がるものと狭くなるケースの両方があるので、体側の間隔から、いちがいにそうであるとはいえない。 しかし側わん症特有の体型を示している。

まとめ。

モアレ観察から、体型的に間違いなく側わん症といえそうだ。
脊柱のわん曲が『進行性』である場合、次のようになる。

いったん脊柱のわん曲が始まると、さらに右側へわん曲が進み、右肩甲骨下部に潜り込み現象を一段と進行させることになる。 そうなると体型的に、右肩は左に比べて高くなり、右体側と肘の間隔はさらに広がり、右臀部の一部が隆起してくる。
典型的な側わん体型である。

側わんの診断は、体型観察で行う四点法と六点法があるが、観察法・診断法・改善法を含めた詳細を、いずれの集中的に載せることにします。

No2

No2

映像を細かに眺めてみると、縦状に細い線が走っているのがわかるが、これがモアレのスリット状になる。

A.

リングは左臀部、次に左肩甲骨中央から発生している。
左右リングで一致するのは、肩甲骨部に発生している左5線目と右2線目であるから、5-2=左が3線多い。 よって左は右に対して5,5mm×3=16,5mm隆起していることになる。

左上部は、盛り上がった形状になっているが、これは体が左に捻じれていることと、上部僧帽筋、菱形筋などが硬くなった影響である。

左下部は、3線目から平背の形状になり、左臀部からの13線目になる。 これは形状として異常である。

右背部は、1線目から大きな平背の形状になり、左肩甲骨部からの4線目が右へ流れている。

B.

左肩甲骨部の4線目が左腰部近くに流れ、次に、左臀部からの13線目がある。
左肩甲骨部の5線目が左腋窩背部に流れ、右は同10線目であるから、右は左に対して5線多いことになる。

C.

臀部からのリングは、左13線目と右11線目で左右が一致する。 よって左は右に対して2線、11mm隆起していることになる。

まとめ。

リングの発生数と形状から、次のことがいえる。

A~Cから、左右の背部は、左が右に対して11~16,5mm隆起していること、左右腋窩の線数は左が少ないことなどから、体が左に捻じれていることがわかる。 よって左線数が右に比べて少ないのは、捻じれによるものである。

また左右背部は、左側全体が硬くなり、その原因は捻じれと関連しているようだ。

改善法。

捻じれや左背部の硬さを解消する戸、体型も正常になるでしょう。 その改善法は次のようになります。 ただし、あくまでも動きやすい動き方をします。

なお、改善法のやり方については、実技をまじえて詳しく説明いたしますので、お待ちください。

立位 左右捻転。左手を上げて左右への横歩き(半歩づつ歩く)。
仰向け 膝倒し。膝・押し出し。片胸そらし。
うつ伏せ 膝・引き上げ。
腰掛け 上体・左右旋。上体・左右スライド。

今回は、姿勢のわるさ、体型のくずれ、生理的わん曲の不足といった体型のものが二体あるので、そのモアレ解説をします。

No3

No3

前かがみ姿勢により、上部のリングは線数が多くなっているが、これは論評しません。 平背傾向にあって、やや硬い体質と体型をしているようです。

A.

リングの発生が肩甲骨下部というのは異常であり、あきらかな平背傾向にあることがわかる。
前かがみ姿勢による線数を取り除いても、全体的に前傾姿勢・平背にある。
それをリングで観察すると、脊柱6~12の線数は4~5線で、5,5mm×4~5=22~27,5mmのわん曲となる。

よって背部の生理的わん曲が極端に少なく、細かくは脊柱1~5は前傾、脊柱6~ 12は平背となる。

B.

腰部から臀部へ6線発生しているので、33mmのわん曲となる。

まとめ。

子供の背中にしては、活力が不足して感じを受けます。どうしたことでしょうか。 案外、上部の前傾姿勢も実は自然なもので、本人の体型そのものだったのかもしれません。ではこういう場合は、何をどうするのかです。

改善法。
立位 後屈。左右捻転。
仰向け 踵・押し出し。爪先・内外転。膝倒し。肩上げ。
うつ伏せ 膝伸展。踵・左右倒し。
腰掛け 上体・左右旋。上体・左右スライド。上体・前屈。
No4

No4

腰部から肩甲間部にかけて7線発生しているので、38mm程度の生理的わん曲があるわげすが、その程度では生理的わん曲とはいえませんね。 どうしたことでしょうか。 しかしこのような体型が子供たちに多いのはたしかです。

さらに、腰部脊柱上のリングは、このような屋根型をしません。窪みに対してリングは窪んだ形状として表れます。 臀部横に筋力による窪みがあるため、モアレ撮影のために緊張していたのかもしれません。
あるいは、お尻を出したことに緊張か。 その緊張が上部にも影響した、と仮定しても、平背傾向の説明にはなりません。

生理的わん曲が不足・平背傾向・緊張感がある、の体型です。

A.

上部のリングは肩甲骨部、下部は臀部の発生になる。
腰部から肩甲間部にかけて発生しているリングの数は7~8線であるから、38~44mmの隆起差がある。 一般的には、おおよそ10~14本発生するので、3~7線不足している。
すなわち、17~40mmの隆起が不足しているから、その分の生理的湾曲が足りない背部、ということになる。

B.

リング数と形状から、平背・腰部の湾曲不足であり、体のやや硬い感じを受ける。 肩甲骨部も、必要な自然発生的隆起も足りない。

まとめ。

脊柱に自然な湾曲が不足しているので、頭部・肩こり・背部の痛みやだるさ・腰痛といったものがあるのではないだろうか。
脊柱の湾曲が不足した体は運動能力が劣るため、ごく自然に運動きらいになる傾向がある。

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