モアレ講座1「構造と製作・撮影方法」

講師:茂貫雅嵩

モアレの干渉模様を読み取ることで、症状と疾患、不健康から健康への改善を客観的に捉えることができます。 そこで『モアレ講座』において、医療と治療関係者、研究機関、整体、一般向けにモアレ・トポグラフィーをわかりやすく解説することにします。 モアレ構造と製作、撮影方法と簡単な写真解析です。

モアレ機器の製作(試作品の製作)

販売用製品とはサイズ・製作方法は異なります。

A.モアレを作る。

1.モアレ・トポグラフィー。

モアレ・トポグラフィー(moire topography)は、暗所で投光して等高線(以降、等高線・リング・本数と表示)を発生させる装置である。 モアレ装置は高さ180cm、横幅65cmの長方形の金属枠に糸を縦に張った構造体である。

体型観察用にさまざまな人たちの背部を撮影し、写真解析した。解析しているうちに、糸縦張りの短所がわかった(写真1)。
その理由は次のようになる。

モアレは光源からの距離に応じた影を作る。
それは太陽と影の関係にたとえることができる。

陽が昇るときと、斜め上にあるときの影を比べると、前者は長く後者は短い。モアレも左側から投光した場合、右側の影は、左側の影よりも長くなる。 つまり「左右の影(等高線)に左右差ができる」のである。

したがって左側光源で撮影すると、背部に発生する等高線は右側は左側に対して長くなる。
これでは正体の身体が、不正体と診断されることになる。

そこで1979年、等高線が左右対称に表れる横張り(糸を横に張る)モアレを作ることにした。

写真1

右肩甲骨部モアレの拡大写真。 糸を縦に張ってあるのがわかる。

2.設計。

さっそく設計にとりかかった。

3.サイズ。

イ.架台。

モアレ本体のことを架台という。 架台は高さ1800mm・横幅650mm(外径)のサイズで、それを600mmサイズの足二本で支える構造になっている(図1)。
モアレ面と脚部は一体型で、アモレ面の上下はできない。

ロ.モアレ面。

モアレ面のサイズは高さ1000、横幅600mmで、成人男子の背部を全部撮影できる。 形は縦型をした長方形の枠で、糸を横に張る(写真2.3)。

写真2 写真3

写真2  背部を撮影したもので、等高線が鮮明に写っている。
写真3  写真2を拡大したもの。 糸を横に張ってあるのがわかる。

ハ.ピッチ・ピン。

長方形の両枠に1000mmの全ネジ棒(ピッチ・溝)を溶接し、長方形の両枠の外側に直系2mmのピンを、ピッチ(溝)数の1/2の数だけ打ち込む。

全ネジ棒のピッチには各サイズがあり、仮にピッチ1,6mm(溝と溝の間隔)の場合、10ピッチで16mmの長さになる。 1ピッチ目に糸をはめて1ピンにかけて折り返し、2ピッチ目に糸をはめる(写真4)。

この要領で行うと10ピッチに5本のピンがいる。
よって1000mm÷1,6mmピッチ=約625ピッチ、つまり625本のピン数になる。625本のピンは両枠の数だから、片側では312と313本になる。 1,6mmピッチ間隔で折り返すから3,2mm間隔に1本のピンとなる。直径2mmのピンを3,2mm間隔に1本を打ち込むというのはほぼ不可能だ。
そこでピンを2列にして6,4mmに1本のピンを交互に配列する。

写真4

上半分が糸をピッチにかけたもの。下半分は糸をかけていないピッチ(黒塗装済)。

4.架台。

架台を作ってくれる所を探した。
東京であれば相当数あるはずだが、ピン打ち込み技術・溶接の仕上がりのよさなど、できの良いモアレを作るとなると簡単には見つからない。 職人はとかく頑固で、ウルサ型が多い。 モアレ本来のデザインを勝手に変えたりする、独善的なところだったが何とか出来上がった。

5.糸張り。

625本(312+313本)に糸を張る。 糸張りは、9時間で2日かかりの仕事になった。 両枠のピンからピンまでの距離は約70cm。 糸の長さの総計は、70cm×625本=437,5mになる。

6.張力。

縦張りは、糸は重力にそって垂れ下がるから、さほど張力を必要としないが、横張りは糸の中央部がピンッと張っているくらいの張力が必要だ。
では、張力とはどのくらいなのか。
卵一個の重さを50gとして、a)6個で300g、b)10個で500gを参考に、横張り糸の総張力を計算してみる。 625本×300g=187kg。 625本×500g=312,5kg。 aで糸を張ると187kg、bでは312,5kgの力がかかることになる。 実際の張力はせいぜい200g程度もあれば十分だ(写真5)。

写真5

張った糸を、バックを赤にして撮影した。 塗装していないので、糸が白く写っている。

7.塗装。

モアレは投光して撮影するので、反射を避けるため全体を黒色にする。 塗装を均一にするため、専門家によるガンスプレーで行うことになる。ツヤ消しの缶スプレーでもいいが、まだら塗りや垂れ塗りにならないように、塗り方に注意がいる。

8.作る。

2~7で個人ができるのは、2設計・5糸張り・7塗装である。
「根気、やる気」の気持ちさえあれば架台は作ってもらい、5と7は自分でできる。
糸張りは、糸を溝にはめて張力をかけながらピンにかけて折り返す作業が続く。 したがって常に指に糸がかかっているため、指が糸で切れることもある。そこで手袋をはめて糸を張るようにする。 軍手では厚すぎるので、写真用の手袋を使う。
写真用はフィルムに柔らかく、キズがつかないようにできているので適している。

B.モアレ撮影。

1.撮影の光。

暗いところで撮影するときは光が必要だ。
モアレ撮影の光は、昔の8mm撮影で使うムービーライトを使う。 等高線は濃い方がわかりやすい。 そのためには輝度の強い光が必要なので、ムービーライトになる。

2.等高性(等高線の発生要因)。

等高線の発生や、リング数の決まる要因は何だろうか。
まず、等高線の発生について。 モアレリングは、地図の等高線が等しい高さを線で結んでできてるのと同じである。 ここでは立位の背中だから、等しい高さとは、等しい隆起ということになる。
したがってモアレ面に対して、隆起差(前後差)があるとそこに等高線が発生する。

写真1~3の場合、こちらから見て向う側への隆起差でリングができることになる。
次に、発生するリング数について。 こちらから見た隆起差で発生するわけだから、隆起差にそって発生数は決まるが、実は、発生するリング数の要因は隆起差だけではない。

写真1 写真2 写真3

3.投光角度と撮影角度。

3枚の写真を比較してもらうと、リングのことがよくわかる(写真1.2.3)。
同じ背部なのにリングの発生数が違う。
投光角度を一定にして(写真は下から上に投光した)、撮影角度を変えて撮るとこのようになる。 左右腋窩を直線で結んだ線上の、腋窩から左右肩甲骨中央部までに発生しているリング数を比べてみよう。

写真1は20本(左10・右10)、写真2は12本(左6・右6。右中央部の黒い部分は、リングが発生したとみなさない)、写真3は31本(左15・右16)発生している。
20本:12本:31本とリング数にはあきらかに大差がある(注)。
写真1~3の撮影角度は次のようになる(実数角度ではなく、撮影した大まかなレンズ角度のことをいう)。

写真1は、レンズ入射角を水平にしたもので、通常の写真撮影と同じ。
写真2は、レンズ入射角を仰角(あおぎ見る角度)で撮影したもの。
写真3は、レンズ入射角を俯角(見下ろす角度)で撮影したもの。

下から投光した場合、仰角で撮影するとリング数が少なく、水平角度では仰角より多く、俯角撮影ではさらに多くなる。 このことからリングの発生数には、投光角度・撮影角度・隆起差の三つが関係していることがわかる。
ところで、標準的なモアレは写真1のことをいう。
写真1を評価すると、姿勢の善し悪しは別として、リングを見るかぎり体型は対称性を保っている。

※ 注 等高線(リング)は、一般的に本数で表す。

C.体型診断。

1.写真解析。

モアレ撮影する目的の一つは、左右のリング数やリングの形状から背部の状態を知ることにある。
つまるところ、リング数やリング形状の解析などの読み取りが重要になる。
筆者は操体で活動しているので、モアレも操体的な体の動き前後の比較に用いている。 他の方法ではそれほど変化しない体も、操体ではもののみごとに変わるからだ。
どのくらい変わるのかというと、リング2~4本がサッと消えるくらい変化する。 しかもその動き方はやわらかく、静かに吐く息でゆっくり力を抜くというもので、瞬間脱力はしない。

2.体型診断。

アモレ観察から、ある範囲の背部の状況を知ることができる。
そして動きによって変化するリングを観察すると、体型診断ができるようになる。
この動体モアレによる体型診断は、頚部・肩部・背部・腰部のことがよくわかるので便利だ(写真4.5)。 このような投光・撮影方法・動体リングの観察・写真解析などは、実際に行ってみるというのが一番いい。

写真4 写真5

※写真4.5は、上から下に投光した。
写真4 両腕挙上のリング。 頚部・肩部・肩甲骨部の不快感をテストに役立つ。
写真5 両掌をほほにつけない体型にする。 頚部・肩部・肩甲骨部の不快感テストに役立つ。

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