解説

1.テスト(動診・運動分析)

顔を左右へ向けてみると、向けやすい方と、向けにくい方のあることがわかる。

図1 図2

また仰向けで、立てた両膝を左右へ倒してみると、倒しやすい方と、倒しにくい方のあることがわかる。

倒角大 不快 倒角小 快適
図3 図4

このように、体を全身的にまたは部分的に動かして、動かしやすいか動かしにくいのかを調べることを「テスト、動診、運動分析」といいます。
動きやすいということは「その動きは安全である」、ということにもなります。
テストは、動き方が大きい(図3,倒れ方が大きい)ことよりも、動き方は小さくとも、動きやすいと感じる(図4,倒しやすい)ことを優先します。

2.快の動き

快、または快の動きとは、次のことをいいます。

  1. 動きやすい方へ動く、動きやすい動き方をする、楽な方へ動く、痛くない動きをする、痛みら逃げるように動くなど、動き方を言い表したもの。
  2. 動くと気持ちがいい、動きが快適だ、といったように動きそのものが気持ち良く感じること。 または動かなくても心地よく感じている、体が気持よく感じることなど、快適さを言い表したもの
  3. 自然な動き・自然な動きの雰囲気・自然な動きの兆しなどを感じること。快、または快の動きとは、動き方を示したもの。

このように、快、快の動きとは「動きやすさ、心地よい動き、動きが心地よく感じる、心地よく感じている、体が自然に動きそれが心地よい、自然な動きの兆しが生まれる」などのことをいいます。

3.動き

ゆっくり動きましょうと言っても、動き方は人によってさまざまです。
その代表例を上げてみると、次のようになる。

  1. 日本舞踊をしている人は、始めからやわらかくゆったりと動く。
  2. 体育系の人は筋力的に力強く動く。
  3. 肥満体の高齢者は、息を止めて一気に動こうとする。
  4. 小中学生はゆっくり動く。
  5. 中高年者は、えっ、ゆっくりですか、といって力で動く。

さすがに、日本舞踊をしている人の動き方は、熟練の感じです。
体育系の人は、体格と体力に自信があるためか、筋力的にいきなり動くこともある。
肥満体の高齢者は、息を止め力を入れて一気に動こうとする。
小中学生はゆっくり動き、中高年者は、えっ、ゆっくりですか、と聞き返しても力強く動くことが多い。

それでも2~3回繰り返していると、皆さんゆっくりと動くようになる。
動きのコツは、最少筋力でゆっくり動くことです。

4.タメ

タメとは、筋力は持続させて、動作を止めた状態にすることをいう。

タメの表現は、1978(昭和53)年の暮れに宮城教育大学の川上研究室(当時、川上吉昭教授・運動生理学)で、操体法写真解説集の出版準備をしていたとき、 久保健教授(体育学)による説明用語の統一を計っていた作業グループが選定したもの。
動かしている筋力は持続して、動作を停止したことが、動きをタメている状態になることから、「溜める(タメル)、とめる(留める・トメル)」の雰囲気を転用したものです。

整体法研究所所長・野口博之氏が「動法と内観的身体(体育の科学、Vol.43.7月号1993,)」の題で載せたものに、 「動法の規範として古人の間の共有せられたものに、キレ、タメ、シメ、シボリ、オトシ等がある。しかしどれ一つとして外観記述を許さない。 それどころかそれを拒むものばかりである」というのを見て、タメはいにしえからの表現であることを知った。

タメは、内側と外側にある。

動かしている筋力は持続して、動作を停止したのがテクニック的(表面的)であるときは、外側のタメ。これこそ野口氏のいう外観記述を許した結果といえる。 動きの中心を腰に求めるようになると、タメは外側から内側へ向かう。
腰に求めたものを意識して、捉えることができると、内側のタメ。

動きに際して腰に中心を置く、または中心を求めるように動き、それを意識することがポイントになる。
その動きが掌、指先、足背、足指といった末端部位でも同じです。

野口氏によると、素直に自らの身体を内観し、その感ずるままに内観から得られる身体像を、内観的身体と定義している。さらに、内観的整体法へと目指している。 体感は、体を感じて動き、さらに感じ続けて、そこから体験されるものを得ようとしているが、同じ方向にあるようだ。

5.ヤメル、力を抜く、脱力

その(1)

著者の前作「操体法の実際」の実技は、瞬間的に脱力している。動きに際して、力を入れないで動くことを指示して、脱力だけ瞬間となる。
つまり、あまり筋力を入れないで動き、力を抜くときだけ「いきなり」ということです。
しかしエネルギー(注)を覚えてから、動き方と力の抜き方がかわってきた。

筋力を入れないで動いたものは、ゆっくり力を抜いた方が痛覚解消の効果が高く、気持がよくてゆったりとした気分になれる。
ゆっくり力を抜く方法は、特に、女性に喜ばれる。図(瞬間と緩慢)

図(瞬間と緩慢)

それでも体型、体質、操作法によっては瞬間的な方が効果的な場合もあるから、方法として必要です。
瞬間脱力を必要とするのは、次のようなケースになる。

  1. 力の抜き方をわからない人、へたな人。
  2. 体力的で、筋肉質な人。
  3. 高齢者で動き方と脱力がわからない人。
  4. 深部の痛みをさぐりだす方法の一つとして。
  5. 瞬間脱力がしやすく、効果的な実技。

動き方と力の抜き方は人によってさまざまだから、動き方と力の抜き方には二つの方法があった方がいい。
また二つ動き方と力の抜き方があるからこそ、新しい動き方も生まれてくるという、相乗と相関の関係もあるのです。

効果的な面から動きと脱力の相性をいうと、仰向けの爪先(足背)そらし・膝倒し・下腿下げなどはやや瞬間の方が合っている。

その(2)

動きの「止め方」において、従来にはない発想がどうしてもいる。
それは「自然に動いた、快適感の兆し(肉体的には動かないが、内面的に動きが生じる、動きを感じる)」ものをトメルときの表現が、できていないためです。
自然な動きは、筋力の動きではないから、脱力という言葉は当てはまらない。
また快適感の兆しは、エネルギーの「働き」によるものだから、脱力という表現はふさわしくない。
当てはまらなくて、ふさわしくないとすれば、それは適していないということになる。

これは筋力による動きと、自然による動きの決定的な違いです。

体感の実技では、SEが本人に「息を吐きながら・動きをヤメテ、ゆっくり力を抜いて」と指示する。
脱力するときは「力を、ゆっくりと、脱力する」というように、ゆったりとした雰囲気になるようにする。

橋本先生の記述に、「脱力が瞬間なほど効果的であって、いくら矯正位置をとらせても徐々に力を抜いたのでは元の不正通りになってしまう(正体の歪みを正す、P66)」とある。 いろいろやってみると、どうも、そうとばかりはいいきれないようだ。
息を吐きながらゆっくり動きを止めるのには、呼吸と動きを意識しなければできない。
意識した呼吸と動きは、エネルギーを高め感覚を呼び起こす働きがあるので、治癒力が高まるため感覚と体型の調整がすごくはっきりしてくる。

そして意識した呼吸は、内面性に静けさを呼び起こす働きもある。
呼吸による心身への好影響や効用については、先人たちが経験していて、それ故に武道、舞い、瞑想法、精神統一などで実践されてきた。

先生は常々、『俺から盗んで、いろんなものとくっつけたり省いたりして、新しいやり方にしろって言ってるんだ。今のままでは進歩してないってことだからなぁ~』 であったから、著者はその約束を少し果たせたようだ。

6.効果の表れ方

歪みが発生すると、感覚、形態(体型)、動きに影響をおよぼす(歪み参照)。歪みが戻るとまず感覚が正常化する。 次に、形態と動き方が改善されるため、その変化に注目すると、改善されたかどうかがわかる。

効果があると、動かなかったものが動くようになり、動きの小さかったものが大きく動くようになってくる。いわゆる、運動範囲の拡大です。
そうすると、テストで倒れ方が小さいというのが、大きく倒れるようになるので、その変化が改善の目安になってくる。

快の動きをすると、痛い、苦しいが解消され、体型が元に戻り動き方が正常になってくるということです。
しかしそれは、あくまでも快の動きをした結果であって、体型を直すという目的で動かしたわけではありません。

傾いた体型の人がいても、その形をなおすという考えはなく、あくまでも動きやすさを求めて、感覚の正常化を行うだけです。
ですから体感の説明に「形を直す、体型を治す」という文字は使っていません。

7.呼び方

その①・本人と操者

これも、タメと同じく操体法写真解説集の製作時に採用したものです。

操体法は体を感じて動くので自力です。
自力であれば解説書を見ながら、自分で治すこともできる。動かし方を経験している者が説明すれば、電話のやりとりでも良くなる。

著者は、電話の経験者です。
ただし、電話のやりとりですから、簡単なものでも1時間くらいかかることを覚悟して。

これからはE・mailでやりとりして良くなり、その方法をホームページで公開ということにもなるのでしょう。そうなると表示は本人か、あなたとした方が適している。

さらにそれで治るのであれば、微妙な体の動かし方が、本人に伝わったということです。まさに「体の動かし方を誘導し、操る」です。
そのことからも、本人と操者としたことは正解でした。

その②・本人とSE

ところが体感では、体の動きでエネルギーを発生させて効果を得ています。つまりエネルギー効果です。 エネルギーの効果には「自然な動き、快の兆し」というものもあります。

ですから、体感の指導を可能にするのは、まずエネルギーを体験することです。 そしてエネルギー体験を深める中で「自然な動き、快の兆し」などを経験して、エネルギーの本質の理解が起きる時を迎えるのです。
それで、初めて、エネルギー的体の動き方を学ぶことができるようになります。

こうなると体験し経験する質的なものは、単に身体を操るという範囲を越えていて、レベルの高いものです。そうなると、体感を指導するための新たな表現が必要です。

そこで体感を指導し誘導する人をSE(SOUTAI EXPERIENCE,動きを経験した人、よく理解している人の意味)と名付けたのです。

8.姿勢

立位における楽な姿勢の作り方は、次のようになります。

  1. 壁か柱に後頭部、背中、臀部をつけて、踵は柱から2~3cm(指2本分くらい)離れて、フクラハギは柱につかない。図1
  2. 腰椎部分は掌か握りこぶし一つ分離れる。
  3. 体の力を抜いて構える。
図1

平面部に体のつくところと、離れるところがハッキリしている立ち方です。
そして必要最小限の起立力ですらっと立ち、安定して気分的にスッキリしているということです。

そのためには、まず足の健康を保つことが基本で、次に床面に足底が均等について、足圧がアーチ部をはさんで前後に別れるようになることです。 図2

図2

姿勢作りの指導に、柱に踵をつけるというのもありますが、それは鍛練的姿勢作りの方法で、間違いとはいいませんが、子供向けの望ましい姿作りとはいえません。
腰椎部分が平面部から完全に離れるようになるのが理想で、特に若い人ではこぶし一つくらい離れることはザラです。 初々しい姿の見本です。高齢者も掌分くらい離れていると、若々しく見えるようになります。つまり、腰にそり(生理的湾曲)ができる体型が、理想的な姿勢ということになります。

両足を腰幅くらいに開くと、楽に立つことができるので体が安定します。楽に立つためには歪みを解消して構造的なバランスを保つことです。
両足を腰幅に開いて立ったときの前後の重心位置は、踵から51~53%辺り(図2)ですが、その姿勢を真横から観察すると、 体型はリラックスして柔らかい雰囲気をうける立ち姿になっている。

9.形態観察・体観

形態観察は古代から行われていた観察法の一つです。

キバはタクト状のもので体を観察したという。
形態とは、ありさま・様子・形のことで、世間や医学界がいうところの意味は以下ですが、体感では動きによる形と型も「形態」としている。

形態

ありさま、ようす、かたち。
form・形、形状、形態。
gestalt(ゲシュタルト)
形態。部分に分解できない性質を有する機能単位を形成するほどまとまった現象の一体系。(ステッドマン医学大辞典より)

10.観察法と改善法

操体法における観察方法と一般的な観察法、および各治癒法の原理的なことを載せておきます。

観察法

静止体 運動体 捉え方 観察法
感覚 形態 感覚 形態
感覚異常を訴える 問診・聞診
形態を観察する 望診・視診
感覚異常と形態を調べる 動診
潜在的な感覚異常と歪を観る 動診

○正常  △異常

A~Dはタイプ別にしたもの。
感覚は本人の訴えによるもの。
形態は操者の観察によるもの。

通常、患者はA~Cでくることになる。Dタイプに出会ったときは、テスト(動診)して動かしやすい方へ動くということになる。

改善法

心身の不快感(異常感覚)解消法 原理・作用・効果
薬物塗布・服用・注射、微粒子 化・科学
DNA、骨髄・細胞移植、人工組織 生体、遺伝子
鍼、指圧、カイロ、オステ、物理療法 物理、E作用
冷温熱、灸、炎 熱、物理、E作用
光、同位元素、X線、中間子、磁気磁力線、
超音波、重力波
光、物理、E作用
花、草、木、砂、石、岩石、火山弾 芳香、物理、心理的、E作用
音色、響き、無音、振動 快音、発散・浄化、同調、E作用心理的、
振動
芳香 芳香、物理、心理的
空中遊泳、浮遊 浮遊感、浮揚感、解放感、非接触感
10 急上昇、落下、無重力 浮遊感、浮揚感、G効果、非接触感、
11 密室、密室(+)音、潜水(+)音、液体 圧迫・圧力刺激、音感、心理ゲル状的、
浮遊感、触感

以上は他動
以下は自動

12 動き=ジョキング、水泳、ストレッチ、
運動、ヨガ、型、武道、太極拳、気功
運動、物理、運動、快適、E効果意識、
発散・浄化、心理的
13 ゲシュタルト療法、フィードバック法、
自律訓練、イメージ療法、発狂療法
意識、発散・浄化、心理的、E効果、
副交感神経
14 呼吸法 横隔膜、副交感神経、E体効果
15 発声、ハミング 響き、丹田、E体効果
16 快の動き 快適、運動、E効果、接触感
17 エネルギー、ラティハン(注)、快の兆し E効果

E効果=エネルギー効果

エネルギーによる動きは、サンスクリット語でラティハン(LATIHAN)という。
その意味は「計画されない動き、意図されない動き、動こうとして動いたものではない動き」というもの。
つまり、自然に体が動くということ。

ラティハンの動きには、空気の膜面(空気の層)の上をなめらかに滑るように、微動的に動くものから激しく動くものまで、さまざまなものがある。
そうしてもう一つの動きは、「体は動かないが、内側に動きの兆しが表れる」というもの。動きの兆しは注意深くしていないと気がつかない。

たしかに、ラティハンというのは自然な動きです。
その人にラティハンが起きるということは、「エネルギーを体験する、自然を知る、自然(エネルギー)と自分のかかわりを覚える」ためであって、それぞれの動きにそれぞれの働きがある。

なめらかな動きは痛みや不快感を解消して、ゆるやかな動きは、この動きがいかに心地よいものかを教えてくれるし、激しい動きは心身の汚れを落とすようになっている。
そして、さらに続けていると「自分」がわかりかけてきて、意識性が高まってくる。
ラティハンを経験してから、著者の操体の動き方が少しづつ変化してきた。

ゆるやかな動きは、とにかく気持がいい。
この動き方を操体の実技でできないものかと考えた。
そこで実技の動き方を徹底的に「ゆっくり」にしたところ、ラティハンの微速の動きの心地よさと同じ感覚になってきた。

そこで微速の動きにするのには、筋力は少なくしてゆっくり動くということを心がけるか、ゆっくりと吐く息に合わせて動くということになってくる。

呼吸に合わせて動くのは、年齢や体質に影響をうけて全員ができるというものでもないが、動きの力を抜くのはほぼ全員ができるようになる。
そのようなことを経て、ゆっくりと動き、ゆっくりと力を抜く方法にたどりついた。
体感の動きをしていて、ラティハンで体が動く(ただしゆっくりとしたもの)ようであれば、その動きを楽しむことです。

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